kagamimochi-nikki 加賀美茂知日記
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発心集 第四巻第7話 或る女房、臨終に魔の変ずるを見る事 The Outsider Episode 43

発心集 第四巻第7話 (あるにょうぼう、りんじゅうにまのへんずるをみること)

いつものことですが 平安時代女性の描画指示を まったく適切におこなってくれません。わたしの無料AI。本文と全く関係のない絵ですが とりあえず張り付けておきます。

ある皇女の娘に使える女房で 遁世(とんせい-亡くなった)したひとがいた。

この女房が病気となって、死を前にしたとき 臨終の教導を願って指導を受けていたある聖を呼び寄せた。そして、その聖の念仏を唱えるのがすすむにしたがって、その女房は顔色が真っ青になって、おそれ慄(おのの)くような様子となった。それをみた聖は いかなることかといぶかって、その女房に問うた。「今あなたは どのようなものが目に見えていますか。」と。すると、その女房は、「恐ろしい様子のものどもが、火に包まれた車をひいて来ております。」とこたえた。それを聞いて聖は、「阿弥陀仏がお誓いになった本願をつよく信じ念じて、南無阿弥陀仏の名号をやすみなく唱えつづけなさい。たとえ五逆(殺父、殺母、殺僧、仏身を傷つける、僧団の和を乱す の五罪)の者であっても、わたしのような善智識にたよって 念仏を十篇唱えれば、極楽に生じさせると仏は誓われたのです。まして あなたは五逆ほどの罪は犯してはいないでしょうが!ここは強く御仏(みほとけ)のお誓いを信じて念仏を強く申し上げるのだ!」と励ました。この聖の教示により、女房は声を上げて念仏を唱えた。

しばらくして、顔の色が真っ青であったのが回復して、女房は 悦びの表情となってきた。

この様子を見て、聖は また女房に 今なにが見えているのかを問うた。すると、「さきほどの火の車は消え去りました。今は 宝玉(ほうぎょく)で飾ったきれいな車に、たくさんの天女(てんにょ)が乗って、音楽を奏でながら迎えに来てくださいました。」と女房はこたえた。これを聞いた聖は言った。「よく聞きなさい。その美しい車に乗ろうとしては決してなりませぬぞ!なお今までと同様に、ただただ阿弥陀仏を念じ奉って、ほとけのお迎えにすがろうと心に強く念じなさい!」と教えた。女房はそれを聞いて、一層強く念仏を唱えるのだった。

そうして、またしばらくして 女房が言った。「さきほどの宝玉(ほうぎょく)の車は消え失せまして、黒染めの着物を着た、貴い様子の僧がただ一人で来られました。そして、『さあ、一緒にまいりましょう。行くべきめあての極楽は どのように行ったらよいのかあなたにはわからぬでしょう。ですから、私が同行して案内いたしましょう。』と言っています」と。これを聞いた聖は、「決して、決して、その僧について行こうなどと思われますな!極楽へ参るのには、案内など要(い)りはしません!極楽へは ほとけの悲願に乗って自然にいけるのです。ですから、念仏を一層唱えて、ひとりで往生するのであると思い切りなさい!」と女房を励ました。

その後しばらくして、

「先ほどいた黒染めの衣の僧ももう見えなくなりました。ほかにも誰もいなくなりました。」と女房は言った。それを聞いた聖(ひじり)は、次のように言った。

「今のうちに、極楽浄土へ 急ぎ参ろうと精神を集中なさい。そのまま、一心に往生を祈念して南無阿弥陀仏と唱えなさい!」と声を励まして教えた。その後、女房は念仏を五六十ぺんほど唱えて、念仏のを唱える声が終わらないうちに息絶えたのである。

以上の話も、 魔が さまざまに形を変えて 仏道を達成しようとする者を邪魔しようと現れることを示すものである。

(20240730訳す)

<訳者より>

筆者 鴨長明が言うように、仏道を妨げる 魔 の出現のおはなしとしておもしろいです。しかも、臨終間際の女房と聖とのやりとりが スリリングで スピード感があって 映画のシーンのようだと思いましたね。これも、漫画家とかどなたか作品にしてほしい、あるいはアニメとかにできたらなぁ、とか思うのですけどね。AIの発達が、このささやかな希望を案外簡単に実現できるようにしてくれないかな、などとささやかな希望を今持っているのですけどね。

本論と全然関係ないですが、AIが今のように現実的に使用される前に 芸術とかクリエイティヴな分野はもっともAIにとってかわられる可能性が低い分野で、肉体労働とか自動車の運転分野がもっともAIから人間が仕事を奪われる分野であるかのようなハナシがまことしやかに流布していましたね。しかし、実際には 高度な知的分野とされた芸術や医療診断、法律相談、会計のような分野がAIの脅威に最もさらされているということになっていますね。そして、介護とか肉体労働とかはAIによって変わられることは今のところまず心配なさそうですね。あと、自動運転とかの話ね。これ国際的、世界的詐欺ですね。何時まで経っても実現しないという感じですね。自動運転はせいぜい鉄道とかのように軌道がある乗り物でようやくできるのかな、という感じですね。普通に現行の道路を、細かに危険回避して、縦列駐車して、車庫入れしてというこまやかな判断は AIには永劫に(これは言い過ぎ?)できない感じですけどね。道路の完全自動運転は永劫に実現不可能な気がしますけどね。いまのところ。