kagamimochi-nikki 加賀美茂知日記
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発心集 第二第12話 舎衛国老翁、宿善を顕さざること The Outsider Episode24 

発心集 第二第12話 The Outsider Episode24 舎衛国老翁、宿善を顕さざること

発心集 第二第12話 舎衛国老翁、宿善を顕さざること

  (しゃえこくのろうおう、しゅくぜんをあらわさざること)

その昔、釈迦如来がインドの舎衛国(しゃえこく)におわしましたときの話である。

阿難尊者(あなんそんじゃ阿難陀アナンダ シャカの十大弟子のひとり。多聞たもん第一)と申すお弟子を一人伴って、舎衛城(しゃえじょう)の外を歩いていた。すると見るからに卑しげな様子の年寄りが女と二人連れで居たのが近づいてきて、釈迦如来に道端にてお会いした。その年寄りと女はともに頭の髪の毛は真っ白で、顔は皺(しわ)だらけであった。身体は骨と皮ばかりに痩せており、皮膚は黒ずんでいかにも衰えた様子であった。その身には汚らしいぼろきれをわずかに集め結(ゆ)んで身に着けていたが、肌をすべて隠すことは出来なかった。少し歩いては息も絶え絶えに大きく喘(あえ)ぎ、時間を空けず休んでいた。

釈迦如来は、この有様をご覧になって傍(かたわ)らの阿難陀に話しかけた。

「阿難、この人を見なさい。この老人は過去に大いに善根(ぜんこん)を積んできたのだ。もし、この人も若くて元気な時に、勤め行ってきて、この世のことを祈ったならば、彼は舎衛国第一の長者(ちょうじゃ大富豪)となったであろう。また、もし彼が出家(しゅっけ)し悟りを開くために努力したならば、三明六通(さんみょうろくつう並外れた洞察力、煩悩を乗り越える力をいう)の阿羅漢(あらかん聖者)になったであろう。しかし、彼はそうできなかった。」

次いで、

「次に、青年期を過ぎて次に盛んな時に 勤めたならば、彼は舎衛国で二番目の長者になったであろう。また、もし出家し悟りを求めたならば、阿那含(あなごん阿羅漢に次ぐ聖人)の聖(ひじり)となったであろう。しかし、彼は出来なかった。」

さらに、

「次に壮年期の元気な時に時に、勤(つと)めたならば、彼は舎衛国で三番目の長者になったであろう。出家して悟りを志せば、斯陀含(しだごん阿那含に次ぐ聖人)の聖(ひじり)となったであろう。しかし、彼は出来なかった。」

最後に、

「彼は愚かで怠惰(たいだ)でこの人生の盛りを全て無為に過ごしてきた。過去の善根を持ちながら、未来の成長を願わなかったために、今このようなつたない様子で、めぐり合うことが難しい人界(にんかい六道の一つ)の生を虚(むな)しく過ごしてきたのだ。」と。

私 鴨長明も今たまたま法華経にめぐりあうことができ、さらに、阿弥陀仏の悲願も学んできたが、これらを勤行せずして徒(いたずら)にむざむざ月日を無駄に過ごしてきた。つまりは、この話の通り乞食(こじき)の老人とは紛(まぎ)れもなく、この自分のことである。

(20231013 13日の金曜日 6のろくでなしが9としてINRIにより再生した吉祥の日に訳す)

羯諦羯諦波羅羯諦 波羅僧羯諦菩提薩婆訶

南無遍照金剛