発心集 二巻第9話 The Outsider Episode21助重、一声念仏に依って往生の事
発心集 二巻第9話 助重、一声 念仏に依って往生の事
(すけしげ、 いっしょう ねんぶつによっておうじょうのこと)
永久(えいきゅう 年号1113-1118の頃 鳥羽天皇治世)のころの話である。
過去に滝口の武士(たきぐちのぶし 禁中警護に当たった武士 天皇の警護の武士)であった助重(すけしげ 伝未詳)という男がいた。助重は 近江の国 蒲生群(おうみのくに がもうごおり 現在の滋賀県蒲生郡しがけんがもうぐん)の住人であった。
この助重は、最後は強盗に遭遇(そうぐう)して矢で射殺されてしまった。そのとき 矢が背中に当たったときに声を上げて、「南無阿弥陀仏」と ただ一声(ひとこえ)発声して死んだ。その声は高く響き、隣の里にまで聞こえたという。すぐ後に、人々が駆けつけて現場をみると、助重は、西に向かって座ったまま目を閉じて死んでいた。
同じ頃に、寂因(じゃくいん 姓は大江。老年になって出家した。三十年門外不出で念仏に専心したという。久安六年1150 八十三歳で没。)という入道がいた。亡くなった助重と互いに知り合う友人であった。しかし、住んでいる住居が近くなかったので、寂因(じゃくいん)は助重(すけしげ)の遭難(そうなん この場合強盗にあったこと)を知らなかった。
寂因は助重が遭難した夜に夢を見た。
夢の中で寂因は広い荒野を歩いていた。すると、道の傍(かたわ)らに死人があった。この死人の周りに僧が複数集(つど)って次のように言った。
「ここに覚醒 往生を果たした人がいる。汝(なんじ お前)もその人を見よ。」と。
寂因は、促されるままに其の死人のところへ行って見た。
その往生を果たした死人を見て、ああ!助重だ、とおもったとき、夢が覚めた。
なんとも不思議であると思っていると、夜が明けて助重が使っていた童子が寂因のもとに来た。そして、助重が遭難し死んだ旨を彼に告げた。
また、ある僧が近江の国を 托鉢乞食(たくはつこつじき)の修行をして歩いていた。この僧が 夢の中でであった人が、「今 覚醒(かくせい) 往生した人がいる。汝(おまえ)は かの人のところへ行って、縁を結ぶのだ。」と、告げた。その夢を見た所が、 助重の家のあるところであった。月日も助重の 遭難 死亡のときと違(たが)わず、同じ頃であった。
かの鳥羽僧正(二巻8話Episode20)の長年の行徳(ぎょうとく)は、助重の一声(いっしょう)の念仏とは比べ物にならぬくらい立派なものである。しかしながら、かの僧正は天狗道に堕(お)ちて悪道に留(とど)まり、この助重は極楽 往生を果たした。
このことから分かるのは、六道の愚かな人間の知見(ちけん)によって 人の徳の高低を考えることはできるものではない、ということである。
(20230922訳す)
*というか、666の六道の世界での地位の高い者、成功者、繁栄者は666に過剰適応しているといってよいから、過剰適応が過ぎるほど、つまり成功しているほど、究極【9】から遠く最後は破滅して終わりやすいということです。甚深。
これは、現時 成功者の毎日の破滅報道見ていれば枚挙に暇なし。